「水の相談所」の理念

 日本の水環境はこの半世紀で激変の一途をたどってまいりました。
 かつて、どこでも身近に存在した山紫水明の世界は、その多くを失いつつあります。 しかも、今日では高度経済成長期にみられた激発的な水質汚染は陰をひそめたものの、地域には汚濁状況の改善されない水域が今もたくさん残されており、その様相は半世紀前と様変わりしています。
 私は社会人となって三十有余年、全国47都道府県を訪問し、その土地の風土にふれ、行政や住民の方々とお会いする機会を得ながら、地域の水問題解決とまちづくりのために力を尽くしてまいりました。
 しかし、自治体関係者や地域住民の方々とお話をしておりますと「地域の課題を解決するために、どのように進めればよいのかわからない」との言葉をたくさんうかがってまいりました。
 一方で、わが国の環境関連科学はめざましい発展をとげており、課題を解決する能力をもった研究者やコンサルタントといった多数の専門家が社会には存在するようになりました。
 地域の課題解決を切望している方々と、解決能力を持った真摯で真面目な専門家をコーディネートする作業こそ、いま求められていると私は考えております。
 この相談所は上記の目的を達成するため、私と地域、そして専門家の皆さんを結ぶ作業場として開設したものです。

 2010年4月、私は職場に日々出勤するという生活から離れることになりましたが、これまで私を育てて下さった地域の方々の情熱に応えるために、そして何よりも、全国津々浦々に豊かな水環境をとりもどし、それらを未来の人々に継承するためにも、残りの人生を地域環境の改善とまちづくり支援に注ぎたいと考えています。


東京・多摩川の写真
多摩川(東京)